大人の予防について

大人になるにつれて、虫歯よりも歯周病に罹患する人が増加しています。若い頃に虫歯を経験しなかった方でも、注意が必要です。さらに、歯周病は歯を失う主な要因となります。歯周病は虫歯とは異なる疾患であり、虫歯は歯そのものに影響を及ぼすのに対し、歯周病は歯を支える骨にまで影響を及ぼす深刻な病気です。原因となる細菌も異なります。

虫歯がないことで表彰された方も、歯周病のリスクには十分な注意が必要です。歯周病は虫歯とは異なり、複数の歯が同時に影響を受けることが多く、次々と歯に損傷が生じる可能性があります。成人以降は、虫歯のケアに加えて、歯周病の予防に重点を置いた定期的な検診を受けることで、リスクを軽減することが可能です。

日本において、歯周病は成人の約80%が罹患しているか、またはそのリスクを抱えているとされています。しかし、「年齢を重ねると必ず歯周病になる」というわけではありません。多くの人々が「歯周病に対する適切な予防策を知らない」ことが主な要因です。歯周病は進行するまで自覚症状がほとんど現れないため、多くの方が病状がある程度進行してから歯科医院を訪れることになります。歯周病が進行し悪化すると、骨の大幅な喪失が生じるため、最終的には歯を失う結果につながることもあります。

50〜60代以降に歯周病が原因で歯を失うケースが多いですが、実際にはこの病気は30代頃から始まることが一般的です。多くの人々はそのことに気づかず、痛みを感じないために放置してしまうことが多いようです。歯周病は進行性の疾患であるため、放置する期間が長くなるほど、状況は確実に悪化してしまいます。

若いうちからセルフケアと歯科医院での定期的な予防ケアを行うことは、歯周病に対する最も効果的な予防策です。さらに、歯周病のケアは全身の健康を守る可能性も秘めています。虫歯や歯周病による口腔環境の悪化は、全身の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。特に、歯周病の原因となる細菌やその毒素は血管に侵入し、全身のさまざまな病気を引き起こすことが分かっています。糖尿病と歯周病の関連性が強いことが示されており、心臓病や脳梗塞、早産などのリスクを高めることも明らかになっています。予防的な歯科ケアを積極的に行うことで、歯周病菌が引き起こす深刻な病気を未然に防ぐ可能性が高まります。
歯周病になると...
歯と歯茎の境目に歯垢(プラーク)が溜まり、プラーク内の細菌が出す毒素により歯茎が赤く腫れた状態になります。
歯を支える骨(歯槽骨)に変化はありませんが、歯肉炎の段階では痛みもないため見逃してしまうことがあります。しかし、放置してしまうと次のステージの「歯周炎」へと進行してしまうので、歯肉炎の段階でしっかりケアをすることが大切です。

歯と歯茎の境目に歯垢(プラーク)が溜まり、プラーク内の細菌が出す毒素により歯茎が更に赤く腫れた状態です。
歯肉炎が進行して細菌感染が進んでしまい、歯を支える骨(歯槽骨)に影響を及ぼします。また、この段階になると歯周ポケットは2~4㎜程度に深くなります。そして歯周ポケット内にプラークや歯石が溜まりやすくなり、中度や重度の歯周炎へと進行してしまうのです。
歯周ポケットの歯石を除去するために、スケーリングを行います。

軽度歯周炎より、症状が進行してしまった状態です。歯を支えている骨(歯槽骨)も溶かされてしまっており、歯周ポケットは4~6㎜の深さになります。歯周ポケット内には、プラークや歯石がたくさん詰まってしまいます。
この状態まで進行してしまうと、歯ブラシの毛先が届かないだけではなく、痛みも出てきてしまうため、歯を磨くことが困難になり、更に症状が進行していってしまいます。

重度歯周炎では、歯を支える骨(歯槽骨)が大幅に溶かされてしまい、歯周ポケットは6㎜以上になります。歯がぐらついていることにより、食事や歯磨きが困難になり、清掃性も悪くなってしまい症状が悪化してしまいます。最終的に歯が抜けてしまうのです。
スケーリング・ルートプレーニングでよくならない場合や、重度の歯周病の場合は、歯周外科手術を提案することがあります。

大人になってからの虫歯は、かつて入れた詰め物や被せ物など、歯の内部に再発する虫歯や、年齢によって歯茎が下がってきて露出した歯根部分の虫歯が増えてきます。
ご自分では確認しづらく、「症状がないから」と検診を受けず進行することも多いです。忙しいからと歯のケアを後回しにせず、定期的なチェックを受けることをお勧めいたします。
大人の予防歯科の
ポイント

お口の状況や歯周病・虫歯の進行具合は患者様一人ひとりで異なります。虫歯リスクが高い方や歯周病リスクが高い方、入れ歯や義歯、インプラントを入れている方、妊娠されている方など個々の状況に応じ、最適な予防治療を行なっていきます。
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定期検診
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徹底的なクリーニング(PMTC)
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一人一人に合わせたブラッシング指導
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食事・生活習慣指導
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フッ素塗布(虫歯リスクに応じて)